18.万力
 
 
〔用途〕
◆万力とは、バイス(∨ISE)とも呼ばれ、さまざまな工作物の加工・組立作業時に、工作物を相対する2面の口金の間に挟み、強く固定する工具です。
 目的とする用途・作業によって、多種類の形式があり、選定に当たっては、十分な検討が必要です。
 
〔特徴〕
◆万力の用途別分類は下表に示す通りですが、大別すると手仕上用万力と、機械加工用万力があります。それぞれ形状、仕様、性能が違っていますが、ここでは、代表的な万力の形状と使いみちについて説明します。
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●横万力
手仕上用万力を代表するものがこの横万力(箱万力とも言う)です。形によって、丸胴形と角胴形の2種類に分けられます。ヤスリ仕上げ、たがね作業、組立作業に多く使われ、構造も堅固であることから金型、治工具等の熟練を要する精巧な仕上げ作業に適しています。(写真1・2)
図
 
〔種類〕
◆万力の大きさは、一般的には、工作物を固定する口金の長さで呼び、呼び寸法75、100と呼びます。まだ口金の開く寸法は、呼び寸法と同等以上に設定されています。
 
◆横万力には丸胴形と角胴形の2種類があり、JISには、75、100、125、150の4種類が規定されていますが、大型万力として200、250もあります。
 口金の幅寸法に対し、口の開き寸法は同等以上に設定され、固定される工作物の深さ(口金の中心位置から摺動面の上まで)も口金の幅寸法と近い寸法になっていて、安定して工作物が固定できるようになっています。
 構造的には丸胴形が堅固になっていますが、剛性向上のため、最近では、本体・可動体の材料に球状黒鉛鋳鉄(FCD50相当)を用いた角胴万力も市販されています。
 
〔使い方〕
◆近年、万力は種々の用途に分かれると同時に高度化されてきました。これまでの堅固で、強く固定すれば良かった時代から、使いやすく、美しく、高精度でかつ、FMS化に対応でき、作業性も向上する等々と、万力に対する考え方が大きく変わってきたことから、それぞれの万力にいろいろな機構が組込まれています。
 
◆万力は、基本的には堅固に製作されていますが、目的によっては、油圧・電子部品の内蔵もあり、放り投げたり、落下させるなどの直接的な強い衝撃を与えることはよくありません。
 また、万力は適正な締付力でしっかり固定すべきもので、万力自体もそのように設計されています。締め付けた後にハンドル部をハンマ等で叩いたり、一度締め付けた工作物をハンマで叩いたりするものではありません。
 
◆口金で固定される工作物は、形状、材質が千差万別で、一般的には熱処理が施され、耐久性にすぐれた口金が組付けされていますが、表面の軟らかい木製・プラスチック・銅製の口金、またあらかじめ工作物の形状に合わせた異形の口金もあります。
 
◆万力自身の動きは簡単ですが、その目的に対応するための構造・システムは複雑なものが多く、取扱説明書を事前によく理解して使うことと、メンテナンスを十分に行うことが万力をうまく使う一番のコツといえます。
 
図
 
警告
取扱説明書を読み、理解してから使用して下さい。不適切な使用は作業者が負傷を負う可能性があります。また、ワーク・バイス等に損傷を与える可能性があります。
 
注意
1. バイス本体の固定は、安定した台(作業台)に確実に行って下さい。不確実な固定はバイスの落下・ワークの外れの可能性があります。
2. ワークは確実にクランプして下さい。たがね作業等大きな力が加わる場合は力の加わる方向(固定口金側へ力が加わるよう)を考慮して下さい。
3. ハンドル端部の玉で手を挟まないよう注意して下さい。
4. 締め過ぎは、ワークの変形・破損・バイスの故障の原因となりますので注意して下さい。