27.吊クランプ
 
 
〔用途〕
◆鉄板、形鋼(H形鋼、山形鋼、溝形鋼等)、鋼構造物、コンクリート製品等々重量物をワイヤロープを巻いて吊り上げるかわりに、レッカーやクレーンのフックに取り付けた専用の吊具で直接鉄板等をつかみ、吊り上げ、運搬、反転、敷設等の作業ができるものが吊クランプ(単にクランプとも呼びます)であって、安全性と簡便な作業性をもった便利な玉掛け用具です。
 吊クランプは、鉄工・造船・機械・鉄骨・橋梁・建築・土木等多くの業界で広く安全吊具として使用されています。
 
〔特徴〕
◆機種により異なりますが概略次のような特徴があります。
 
◆クランプは重量物を吊り上げて運搬するために、外れたり、滑ったりしないように、吊り上げ重量に応じて、ますます強い力で噛み込む機構となっています。
 
◆くわえた時に手をはなしても外れないようにするため、バネによるロック機構式のものがあります。
 
◆着脱に便利な開放式となったものや、遠隔操作で取り外し(開放)できるものもあります。
 
◆クランプは通常、縦吊り用と横吊り用に分かれますが両方に使用できるねじ式のもの等があります。
 
〔種類〕
◆吊クランプは、吊る物の形状、寸法、吊り方、重さ等により非常に多くの種類がありますが、基本的には縦吊り用、横(水平)吊り用および万能型の3種類です。メーカーによって型式の呼び方は異なりますが、容量は定格荷重(基本使用荷重)を表し、クランプ範囲はくわえる部材の厚さを表示しています。
 
縦吊クランプ
主に鉄板等をくわえて引き起こし、縦に吊り上げて運搬し、反転する作業に使用するクランプで、容量は1/2ton〜10ton、クランプの範囲は、その容量に応じて10mm、20mm、30mm、50mm等の種類があります。
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横吊クランプ
H形鋼、山形鋼やそれらの構造物を水平(横)にクランプして吊り上げるもので、鉄骨、建築、橋梁等、構造物建築に安全吊具として広く使用されています。この他、建築用としては、角コラム吊もあります。このように、用途に応じていろいろな種類があり、容量は1/2ton〜5tonのものが一般に市販されています。
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ねじ式クランプ
鉄板や形鋼、それらの構造物等の鉄鋼材料用に使用するクランプでねじの先端または反対側に取り付けた半球状のカムが全方向に傾いて、より強くクランプするため、多くのものは縦吊り、横吊り、横引き等いろいろな作業ができます。容量は1/2ton〜5ton程度のものがあります。
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ハッカー(フック)
平鉄板の4カ所にハッカーをかけて水平に吊るもので、絞り吊り用、引っ掛け吊り用、カム付き型等があります。容量は1ton〜5tonのものが一般的です。
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無傷クランプ
最近、構造物の安全施工のため、鉄板や形鋼に傷が付いではいけない部材が増えてきました。そのために縦吊、横吊、カム付きハッカー等に無傷クランプが開発されました。これは、鉄板、形鋼の他、ステンレス鋼、アルミ、鋼板等にも利用されています。
 
コンクリート製品用クランプ
コンクリート製のU字溝、フリューム、溝蓋、L形コンクリート、マンホール、間知ブロック等をレッカー等で吊り上げ、積み込み、積み下し、或いは現場での敷設用に使われるクランプです。これも用途に応じ多くの種類と容量のものがあります。
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その他のクランプ
吊り上げ物の種類や用途、吊り方によって、いろいろなクランプが開発されています。例を挙げれば、丸棒、パイプ、コイル、ドラム缶、一斗缶、ビーム、L形ロンジ、安全帯用鉄筋バー、さらにはALC、その他住宅用の壁、床材等々、たいへん多くの種類があります。
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〔使い方〕
◆作業方法に適した機種(型式)の中から吊り上げ物の形状、重量、板厚等により最適なクランプを選定して下さい。
 
◆多数のクランプを同時に使用する時は同じ機種、容量の物を使用して下さい。
 
◆クランプは確実に取り付けると同時に不安定な吊り方は絶対にしないで下さい。
 
◆必ず、取扱説明書にしたがって正しく安全に作業をして下さい。
 
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危険
1. クランプを使用する前に、必ず取扱説明書を読んで正しい使用方法・安全上の留意点を守って作業をするようにして下さい。取り扱いを誤りますと重大な事故につながります。
2. 玉掛け作業の法定資格のない人は、使用しないこと。
3. 吊り荷の落下並びに転倒範囲内には、絶対に立ち入らないこと。
4. 玉掛け作業以外に使用しないこと。
5. クランプの仕様(重量・板厚等)範囲内で使用すること。
6. クランプの変形、亀裂、作動不良、摩耗、目詰まり等異常のあるものは使用しないこと。
7. クランプは絶対に溶接等、加熱その他改造はしないこと。
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