9.ドライバー
 
 
〔用途〕
◆ドライバーは、小ねじや木ねじを締め付けたり取り外したりする工具で、使う目的によっていろいろな種類があります。呼び方は、「ドライバー」の他、「ズクリユードライバー」、或いは「ねじ回し」と呼ぶこともあります。
 
〔特徴〕
◆ドライバーは作り方で分けると、「普通形」と「貫通形」があります。普通形は、軸(金属の部分)がハンドルの途中まで入って固定されています。
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◆貫通形は、軸がハンドルの中心を通って末端まで出ています。強く締めたねじや鋳び付いたねじにショックを与えて緩める場合にも使えます。
 
◆また刃先は、十字(プラス)や−文字(マイナス)などがあります。締め付けたり緩めたりするねじがプラスねじの場合、「プラスドライバー」を使います。このプラスねじは、ねじの頭の部分の溝が十字形になっているもので、電車や自動車、或いは家庭にある電気器具などに多く使われています。反対に、−文字に溝の切ってあるねじを「マイナスねじ」、そのねじを回すドライバーを「マイナスドライバー」と呼びます。
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◆その他に、ボルト・ナットを回す「ソケットドライバー」や六角穴付きボルトを回す「へックスドライバー」、特殊ねじ用ドライバーとして、ねじとドライバーのくいつきをよくしたスパドライブねじを回す「スパドライプドライバー」、トルクスねじを回す「トルクスドライバー」などがあります。
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◆軸に磁気を帯びさせたものは、「磁気入り」「MG入り」「MG」と表示されています。磁力があると、刃先部にねじを吸いつけることができて、ねじを締め始める時に便利です。
 
〔種類〕
◆マイナスドライバーは、品質と刃先寸法によって、普通級(N級)と強力級(H級)があります。
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◆寸法は主として、軸のつけ根から先端までの長さで呼びます。また、それに先端部の刃幅を組合わせて呼ぶこともあります。この長さと刃幅はJIS規格で決まっていますので、締め付けるねじによく合うものを選ぶことが大切です。長さと刃幅の関係は表1の通りとなっています。
 
◆例えば、100mmのドライバーといえば、先端部の刃幅が6mmのものとなります。ただ使いみちによって、軸の長さを普通より長くしたもの、或いは普通より短くしたものなどがあります。それを間違えないように、長さだけでなく先端部の刃幅を組合わせた呼び方があるわけです。
 例)4.5×50mm、6X100mmのドライバーなど
 
◆さらに、先端部の刃幅と刃厚の関係も決まっています。これはねじの頭の溝がJIS規格で決まっていますので、その溝幅に合うようになっているのです。その関係は表1の通りです。
 
表1                    単位:mm
軸の長さ
先端部の刃幅
先端部の刃厚
50 75 100 125 150 200 250 300
4.5 5.5 6 7 8 9 10 10
0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1 1.2 1.2
◆プラスドライバーは、大きさを番号で呼び、1番から4番まであります。プラスドライバーの呼び番号と締め付けるプラスねじとの関係は、表2の通りです。
 
◆プラスドライバーの寸法は、マイナスドライバーと同様に軸のつけ根から先端までの長さで表わします。呼び番号と軸の長さの関係は、表2の通りです。
表2                 単位:mm
呼び番号
軸の長さ
小ねじの呼び径
1番 2番 3番 4番
75 100 150 200
〜2.9 3〜5 5.5〜7 7.5〜
◆JIS規格では、これら1番から4番までのものをH形(フィリップス系の意味)と称し、この他に0番に相当するS形(スペシャルの意味)が規定されています。このS形は写真機、めがねその他精密機器の呼び径2mm以下の小ねじに適用されます。なお、欧米ではこれらH形、S形以外にZ形(ポジドライブ系の意味)も使用されています。
 
〔使われている材料〕
◆軸の材料は、硬鋼線材(炭素Cの含有量が0.45〜0.65%)やその他の合金鋼が使われています。合金鋼は鋼(はがね)にクロームバナジュームなどの合金を相当量加えて、摩耗や衝撃に強い性質を持たせた鋼です。
 
◆先端部または軸部全身には熱処理(焼入れ・焼戻し)がしてあり、その硬さはロックウェルCスケールの52以上が標準となっています。品質の検査では、先端をねじと同じ溝がある試験棒に差し込み、ハンドルにある決まった力を掛けて、先端が欠けたり、ねじれたりしないかなどの試験をしています。
 
◆軸部の表面処理は、クロームメッキ(強靭なメッキ層を持ち光沢が美しい)、黒染(四三化鉄被膜による防錆処理)や鋼材そのままのものの他に、「ブラックポイント」という精度が高く耐久性に優れた加工もあります。
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◆ハンドルは従来木製のものがほとんどてしたが、最近は見た目にもきれいな樹脂製が普及しています。樹脂柄には、セルロースアセテートやボリプロピレンなどが使われています。またこれらの樹脂と軟質樹脂を組合わせたものは、握り心地がよく使いやすくなっています。
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・・・・・・・・・・・・ 参 考 ・・・・・・・・・・・・
〔選ぶ時の注意〕
ドライバーはJISマークの付いている品物が出ていますから、これを選べば間違いがありません。割れ、傷、錆びなどがある品はもちろんいけませんが、外観上で品物の良し悪しは、あまりわかりません。JISマークの付いていないドライバーや特殊ねじ用のドライバーの場合は、信用のある店に相談して選ぶことが必要です。
 
い3いろな機能付きドライバーの種類
 
〔種類〕
ラチェット機構付きドライバー
このドライバーは、軸の根もとにラチェットという仕掛けが付いていて、右・固定・左の3通りに使える便利なものです。
ラチェットの切替スイッチを中央に合わせると、軸とハンドルが固定され、普通のドライバーとして使うことができます。切替スイッチを「右回し」に合わせると、右に回した時だげねじを回すことができ、左へ回すと空回りになります。
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繰り返し手首を動かすだけで、バンドルをいちいち持ちかえる必要がなく、ねじを締めることができます。切替スイッチを「左回し」にすれば、右方向が空回りします。また、ラチェットの前の部分を指先で回せば、刃先だけを早回しすることができ、ねじの仮締めがしやすくなっています。
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インパクト式ドライバー
普通のドライバーでは緩めることのできない「溝のすり滅ったねじ」や「錆びついて固まっているねじ」を緩める時や、特に強く締め付ける時に使用します。ハンドルを握り、ねじを回す方向に手の力を加えながらハンドルの尻をハンマで叩くと、その力が回転に変化して容易にねじを締めたり緩めたりすることができます。刃先はねじに合った大きさのものを、差し替えて使うようになっています。また、ソケットも使用できるように差込角(四角凸部)が付いているものもあります。
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警告
1. 作業時には、必ず保護めがねを着用して下さい。
2. ハンマの打撃は、面の中心に対してまっすぐに打つようにし、斜め打ちなどをしないで下さい。
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オートマチック式ドライバー
軸の回りに、らせん状の溝(スパイラル溝と言います)がついています。刃先をねじ頭に差し込み、バンドルを押しつけるだげで刃先が回って、ねじを締めることができます。ラチェット機構付きドライバーと同じように、右・固定・左の3通りに切り替えることができます。
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押し付けたバンドルが戻る時は、刃先は空回りします。本体に組み込まれた駒とスパイラル溝が噛みあって回りますので、回り方も早く能率的です。刃先はねじに合った大きさのものを、差し替えて使うようになっています。
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注意
シャフト部に手を挟まないよう注意して下さい。
 
差替ドライバー
これはハンドルと刃先(軸)が別になっていて、ハンドルの先の取付部(チャック)ヘ、使おうとする大きさの刃先を差し込んで使うものです。差し替え軸が4〜8本ぐらいついていますので、ちょっとしたねじ締めや、持ち歩きなどには便利なものです。
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絶縁ドライバー
ハンドルと軸が特別の樹脂で絶縁されています。海外の規格で規定されたこのドライバーはショート事故や感電事故などの防止のために作られたもので、電気関係の仕事にも安心して使えるようになっています。ドライバーには、何ボルトの電圧に耐えられるかが表示されています。使用時には、絶縁手袋などの絶縁保護具を併用します。
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検電ドライバー
電灯線やラジオなどの電気を調べる装置の付いたドライバーで、低圧用(250ボルト程度まで)と高圧用(15000ボルト程度まで)の2種類があります。電気が流れていると、ドライバーの中のネオン管がつく仕掛けになっています。低圧用の場合、検電の際にドライバーのハンドルの末端にあるねじを指で押え、刃先を+線に接触させれば、ハンドルの内部のネオン管が発光し、電気が通していることがわかります。
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警告
1. 使用前に必ず点灯確認をして下さい。
2. ショート・感電に注意して使用して下さい。
3. それぞれの検電範囲内で使用して下さい。
4. 水や油の付いた状態では、使用しないで下さい。
 
注意
1. 差替軸は取付部に挿入し、確実に保持されているかを確認して下さい。
2. 差替軸を取り替える時は、刃先に注意して取り替えて下さい。
3. 差替軸は作業工具用です。動力工具に使用しないで下さい。
 
精密ドライバー
時計やめがねなどによく使われている、小さい径のねじに用いるドライバーです。
複雑な箇所にも使えるように、軸は細くなっています。また、ハンドルの未端部が凹形や凸形になっていて指先で押しつけて使用することができます。
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ソケットドライバー
六角ボルト・ナットを回す時に使用します。
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その他
ハンドルが丸く大きく、回す時に力が入りやすくなった「電工用ドライバー」、狭い場所で使えるようハンドルも軸も思い切って短くした「スタビードライバー」、軸が四角形になっていて、スパナなどをかけて強い締め付けができる「角軸ドライバー」、などたくさんの種類があります。
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警告
1. ドライバーをたがねのかわりにして、ハンマで叩いたり、物をこじったりするのは、ドライバーを悪くしてあとで事故を起こす元になりますから絶対に行わないで下さい。
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2. ねじを締める時に、片手に材料を片手でドライバーを持って使用したりするのは大変危険ですので、絶対やめて下さい。例えば、電気のテーブルタップなどを片手で持ち、片手でドライバーを使う時、ドライバーとねじがまっすぐにならないために不安定となり、ドライバーが外れたりして思わぬけがをするもとになります。
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3. 電気作業の時は、ショート事故や感電事故などの防止のために必ず元の電源を遮断してから行って下さい。普通のドライバーは絶縁されていません。
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4. 作業時には、必ず保護めがねを着用して下さい。
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注意
1. ドライバーは、ねじの溝に合った寸法のものを使うことが最も大切です。ねじの溝に合ったものを選ばないと力を入れているときに、ドライバーがねじの溝からはずれて、思わぬけがをするもとになります。同時にねじの溝が壊れてしまい、締めにくくなったりはずしにくくなったりします。
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2. ドライバーを使用する前には、刃先にかけやわれ、ひびがないか、またハンドルが破損していないか確かめてから使用して下さい。
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3. 無理な姿勢で作業しないで下さい。常に足元をしっかりさせ、バランスを保つようにして下さい。
4. 改造をしないで下さい。加熱・加工などをした場合は、著しく品質の低下を招きます。
5. 木に木ねじを締め付ける時は、はじめに木ねじをハンマーで叩いてまっすぐに立てておき、木ねじに左手を軽くそえ、右手でドライバーで平らに回しながらねじ込んでいきます。その時にあまり力を入れて押しつけると木ねじは倒れてしまいます。また、硬い木や大きい木ねじをねじ込む時は、先に穴をあけておくと良いですが、柔らかい木の場合は木ねじが緩んで効かなくなる場合がありますので、気を付けて下さい。